楽器屋さんへゆこう2
〜Instrument Store’s Blues〜


好評を頂いた?Beat9「楽器屋さんへゆこう」の第二弾〜である。

すぐ調子に乗ってしまう、べえすやである。

(ホンマほんま・・・)

ところで、いつも物欲フツフツ人生模様な楽器屋さんであるが、

店員さんの立場になって考えたことがあるだろうか?

もちろん、べえすやには楽器屋さんで働いた経験はない。

店員さんは、いつもどう思って何を考えて働いているんだろう?

いつもお世話になっている楽器屋さんだから、

一度、お店側から考えてみるのもいいかなあって思った。

はたして我々(客)は、店員さんからどう写っているのか?


仮想ドキュメンタリー・・・

べえすやが、もし楽器屋さんで働いていたら?という仮定で、

話をすすめてみたい。

(長文に注意!)

以下におけるお話は、全てフィクションです。



#1 ワンルームマンション

楽器屋の朝は遅い・・・

昨夜のライブでのコーフンも覚めないまま、

またいつもの朝を迎えた。

まだ酒のニオイが残っている息を、シャワーで強引に流し、

熱いコーヒーを飲んでいる午前9時。

「普通のサラリーマンなら、電車のラッシュの中だな・・・」

と、自分の環境を少し幸運に思う彼・・・

名前:べえすや(店では短く「コラ!」と呼ばれることもある。)

年齢:24歳(音楽専門学校卒)

仕事:楽器屋勤務2年

趣味:音楽演奏(ベース担当)

クルマなし、彼女アリ・・・

「昨日は盛り上がったな・・・」

趣味というより、人生の目標であるミュージシャンへの夢を持ちつづけている彼は、

毎週金曜日の夜は、

顔の効くライブハウスで、バンド演奏を行っている。

そして、

その場で知り合った女の子と一緒にベッドの中だったりもする。

(音楽やっててよかった・・・)

と、密かに思う彼である。

だが、今朝はめずらしく独りだ。

ちょっとけだるいカラダに気合を入れて、

ワンルームの部屋にカギを閉め、

いざ出勤だ。

タイトル:「楽器屋さんへゆこう2」

ロールタイトル流れる。

#2 楽器店前

開店30分前に出勤すること・・・

そして、その時間には必ず店長は来ている。

「おはようっす!」

挨拶もそこそこに、

まずは店内を掃除する。

そんなに汚れていないので割と楽。

一番ツライのは、トイレ。

ライブハウスもそうだが、どうして音楽系の空間って、

トイレが狭くて汚いのだろうか?

「ちぇっ」

二番目にツライのが、店の前に置いてある灰皿の掃除。

店内は禁煙だし、みんなココで煙草を吸う。

そして、しなくていいのに、

ウーロン茶とかが入っていたりする。

「うぇっ」

まあ、この作業さえ済ませてしまえば、

午前中とかは、客も少ないしイイ時間帯ではあるのだが・・・

#3 店内カウンター

「よかったら、出しますよ〜」

と、同僚の客に試奏を薦める声が聞こえてきた。

(え〜もう、お客が来よった・・・)

彼の店では、「いらっしゃいませ〜」などと言わない。

客が入ってきても、さりげなく無視するように言われている。

そして頃合いを計って、

「よかったら、弾いてみます〜?」

と、フレンドリーに話し掛けるのだ。

”女の子をナンパすると考えろ”と店長はアドバイスする。

名言である。

しかしナンパと言われても、その日の客はネクタイの緩んだ営業マン風。

(きっと、サボリやな・・・)

ハラも出ている。

昔バンドでもやっていたのだろうってすぐ解る。

「へぇ〜ジャコモデルって2機種あるのぉ〜」

と、カタログの会話が始まる。

(がんばれ相棒!)

と、密かに同僚を応援する。

朝から売上があると、店長が昼飯をおごってくれるケースもあるのだ。

しかし、ナンパは見事失敗する。

ほとんどがそうである。いつものことだ。

(あ〜あ昼飯が・・・)

カウンターの中から、べえすやの小さなため息が聞こえる。

#4 店内その1

お昼休みは、ちょっと忙しい。

休み時間を利用して、サラリーマンたちが押し寄せてくるのだ。

しかし忙しさの割には、売上は上がらない。

”まず友達になりなさい”

店長のコトバだ。

とりあえず、顔を売る。

いつでも待ってますよ〜って思わせる。

楽器屋で、彼は人生は待つことであることを知る。

そして、

(オレもいつかは、音楽でメシを食う・・・)

と、待っているべえすやである。

「キャ〜JOROのんや〜ん」

と、黄色い声がする。

同僚がその声に振り向くときには、もう遅い。

女の子2人組の前に、べえすやはいる。

(ナンパでは、負けヘン・・・)

人気ミュージシャンモデルは、楽器も人気である。

聞くと、女の子だけでバンドを始めるらしい。

で、ボーカルのちょっと可愛いYUKI風の友達に誘われて、

ちょっと崩した小柳ユキ風の女の子がベースを選びに来たんだそうだ。

「どんな音楽系?」

と、フレンドリーに話し掛ける。

ここで大事なのは、お金の話をまずしないこと。

どうせ金のない学生なんだし、大きな売上は期待できない。

将来的なことを考えて、ここはまず”つながり”を作ることが大事なのだ。

ひとつ楽器を買ってくれれば、

新しく弦を買いにリピーターとしてお金を落としてくれる。

ピックなんかのアクセサリーの売上もバカにできない。

「ちょっと音出してみたら?」

YUKI風の娘にも後押しされ、

小柳風の女の子が、ぎこちなくベースを構える。

「うわぁーうわぁー」

と、音も出さずに声を出す小柳風・・・

(落ちたナ・・・)

はじめから、このミュージシャンモデルに決めていたみたいだ。

(あとは、予算交渉・・・)

こんな子たちには、思い切ってネギってあげる。

しょせん売上はしれている。

将来が大事だ。

結局、3万円のベースギターを36回払いのローンで組み、

商談成立〜(^o^)丿

ちょっとうれしい彼である。

#5 店内その2

見るからにイヤなタイプだった。

トシはべえすやと同じぐらい。

一本のジーンズで一週間耐久する自分とは程遠い、

アルマーニの皮パンツ。

大きく露出した貧弱な胸に金のネックレス。

髪も金色でおっ立っている。

「これ、音出しできるぅ?」

と、馴れ馴れしく聞いてくる。

向こうの方からフレンドリーにしてくる客には要注意なのだ。

「いいっすよ〜」

と、営業的笑顔で応対する。

(オレは楽器屋で働くプロなんや・・・)

このテの客を黙らせる一番の方法をやってみることにする。

まず指定された楽器(きまって高級モデル)をすばやくチューニング。

そして、おもむろにライブで鍛えた超絶ワザを弾いてやる。

16〜スラップ〜タッピング〜ブリブリ♪(どや、エエ音やろ?オトコやろ?)

で、またすかさずチューニング調整・・・

これを5回繰り返し、金髪くんに渡してやる。

(さあ、キズもんしたら、承知せえへんでえ〜)

ほとんどこの時点で、その金髪くんは怖気づいて、

「ええ音やな〜」

と、ちょっとつぶやき去ってゆく。

(あっ、またやってもうた・・・)

ヨコで店長が睨んでいる。

(でも目は笑っていた。)

#6 店内その3

閉店間際に来る客には、オイシイ人が多い。

「あの〜いいですか?まだ」

(ええよ〜もう終わりで気も楽やし・・・)

きちっとしたスーツに、しなやかな腰。

多分、社会人バンドでも入っているのだろう。

仕事が休みの時は、ひたすら楽器を磨いているタイプ。

楽器を愛する人は大好きな、べえすやである。

「あっ、あったあった・・・」

と、聞こえた瞬間、

「弾いてみますか〜?」

と声を掛ける。

(ジャストのタイミングやな・・・)

閉店時間になろうとしていたが、同僚と店長はゆったり雑談なんかして、

見守っていてくれる。

軽くチューニングしてあげて、

すぐその楽器(スタンダードだが、高級モデル)をスーツさんに渡す。

アンプを鳴らさずに、まずは生鳴りを確かめているスーツさん。

(おっ、この人なかなかヤルな・・・)

その後、

「音小さめで、フラットなトーンで・・・」

(ヘタなやつほど、歪ませたがるしな・・・)

しばし運指パターンを弾いたのち、聞こえてきたのは、

素晴らしいジャズフレーズ。

(うわっ、めちゃウマやん)

こんな人に弾いてもらうと、楽器も喜んでいるようである。

試奏時間10分。

ベースのボリュームを下げ、

「ありがとう・・・またもう一回弾きに来て考えさせてください。」

そうそう、しっかり考えて、買って欲しい。

ずっとつきあってゆくパートナーなんだから・・・

「はい、お待ちしていますから。」

最後の客を軽く見送った後、楽器屋の一日は終わる。

午後8時。

店長の飲む誘いを振り切り、楽しみにしていたライブを見に行く。

また熱い夜になりそうな、そんな気配は感じながら、

夜の街に彼は融けていった・・・

エンド・タイトル、ロールアップ

テーマ曲流れる・・・



ちょっと事件でも?起こそうかとも、考えたが、

割と淡々と描いてみた。

あくまで空想な話である。

でも、楽器屋さんには、まず悪い人はいない。

音楽が楽器が好きな人は、みんなイイ人だと、

べえすやは確信している。

だから・・・

もっと楽器屋さんへゆこう!

きっと自分にあった楽器屋さんがあるはずだ。

そして、そんな楽器屋さんと出会えたら、

人生は確実に面白くなる。

きっと・・・


素晴らしいお店で、オリジナルを作ってもらっている

ベースマンの道は続いてゆく・・・(はず)

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